25歳の主婦です。
1年ほど前から、何人かの男性と行きずりで不倫をしています。
旦那にも相手がいるので、これを不倫というべきなのかは微妙ですけど。
旦那と出会ったのはあたしが19の時です。
その頃、あたしは文字通りどん底の状態でした。
実家と縁を切って東京に出てきたのはいいけれど、いろんな意味で行き詰っていたんです。
あたしの親は今でいうネグレクトの典型で、暴力も当たり前という家庭でした。
そんな家ですから、進学資金なんて出してくれるわけもありません。
結局、中卒で働くことになりました。
その当時から、このままではどうしようもないとは思っていました。
何とか決まった職場の給料は安かったですし、何より親は相変わらず。
それに、兄や姉との仲も最悪でした。
同じように親に殴られてきたもの同士ではあったんですが、だからといって助け合いなんてありません。
荒れていた彼らにとっては、おとなしい上に年下のあたしは、体のいい憂さ晴らし相手にしか過ぎなかったんです。
しかも、あたしには友達もひとりもいませんでした。
あたしが内気なのは、子供のころからずっとです。
家庭環境もあるんでしょうけど、中学のころとかかなりいじめられましたし。
だから、性別関係なく、何となく相手が怖いんですよ。
あまり他人を信用しないクセがあったんです。
それでもまだ器用ならよかったんでしょうけど、あたしは人との関係に限ってはすごく不器用だったんです。
そんな調子でしたから、地元には何の未練もありませんでした。
一刻も早くここから脱出することが、あたしの唯一の希望でした。
そうしないと、終わる。
あたしは、少しずつでしたが、お金を貯めました。
さいわい要領だけはよかったので首にもならず、なんとか目標の資金を貯め切ったんです。
あたしでもできる住み込みの仕事を探して連絡を取り、どうにか東京に出てきたのが18の時でした。
わざわざ身元の怪しいあたしを取ってくれるような会社ですから、労働条件は最悪。
給料だけはさすがに東京の職場だけあって高かったですが、それ以外はひどいものでした。
それでも、実家を脱出できただけでも、あたしにとっては天国でした。
ただ、その天国は長くは続きませんでした。
不況のあおりを受けて、その会社が倒産しちゃったんですよ。
あたしはたちまち行き詰ってしまったんです。
お金は余裕のある状態ではなかったですし、保証人さえいないんですから。
なんとか次の仕事と保証人不要の部屋は見つけたものの、住み込みでなくなった分、出費は跳ねあがってしまいました。
困ったあたしは夜の仕事にも手を出しました。
ですが、あれは無理でした。あたしは、夜の仕事をするには内気過ぎたんです。
結局、夜の仕事も続かず、昼の仕事と、たまに日雇いのラベル張りとかをしてしのぎました。
昼の仕事の方は事務だったので、要領だけでなんとかなっていたんです。
でも、どんなに頑張っても日増しに貯金は厳しくなってきました。
それに、東京に出てきてしばらくたっていたけど、やっぱり友達はできないまま。
このままずっとこんな人生が続くのかなって思うと、どんどん煮詰まってきたんです。
そんなピンチを救ってくれたのが今の旦那でした。
昼の仕事の上司だったんです。
歳はかなり離れていましたが、彼にとってあたしは好みのタイプだったみたいです。
告白されたときは驚いて返事もできませんでした。
だけど、すごくうれしくて。
これで幸せになれるって思ったんです。
はじめてのデートのときのこととか、今でもはっきり覚えています。
原宿に行ったんですけど、緊張して全然喋れないあたしをエスコートしてくれたこととか。
遊園地にも連れて行ってもらって、一緒にソフトクリームを食べたこととか。
あたしにとっては、はじめてのことばかりでした。
1ヵ月くらいで処女も失って、半年後には同棲。
1年後には結婚が決まっていました。
結婚式は、あたしの家族だけがいないっていうのがちょっと変でしたが、それでも涙が止まらなかったです。
ようやくここまでこれたって。
ただ、結婚生活が始まって1年もたつと、だんだんほころびが出てきたんです。
あたしは性格的に、話して面白いタイプじゃありません。
一方、旦那は積極的で会話も面白い、一言で言ってモテるタイプです。
だから、旦那にとっては、あたしは本来退屈な相手だったでしょう。
それでも結婚まで進めたのは、単にあたしが若かったこと。
そして、あまり口答えをしなくて、扱いやすかったのが大きいんじゃないかと思っています。
結婚当初は新鮮さだけでどうにかなっていたんですが、徐々に無言の時間が増えてきたんです。
それでもあたしにとって旦那は初めて好きになった人ですし、恩人でもありました。
だから、せめて一生懸命家事はしましたし、料理も勉強しました。
だけど、それだけでは旦那をつなぎとめることはできなかったんです。
旦那は休日に一人で頻繁に外出するようになりました。
それどころか、平日も帰って来ないことが増えてきたんです。
そして、あたしとの夜の生活もほとんどなくなってしまいました。
いくら経験が少ないあたしでも、ここまであからさまだと大体の想像はつきます。
それでも信じたくなくて、あたしは必死で話のネタを仕入れたり、デートに誘ってみたりもしました。
でも、とうとう現実を受け入れざるを得なくなったんです。
ある日買い物に出たとき、探していたものが見つからず、駅前まで遠出したんです。
その時、女の子と腕を組んで歩いている旦那を見てしまったんです。
頭を殴られたようなショックでした。
呆然としながら二人のあとをこっそりついていくと、駅からほど近いホテルに入っていったんです。
その日、夜になっても旦那はかえって来ませんでした。
「残業で遅くなる」という電話が一本あったきり。
泣きましたよ、そりゃもう。
普通はこれでお別れってことになるのかもしれません。
だけど、あたしは言い出すことができませんでした。
旦那への未練はありましたし、何よりここを出たところであたしに行き場はありません。
結局、旦那の浮気はその後も続きました。
むしろ、どんどん大胆になってきたんです。
ベッドのそばに、長い髪の毛が落ちていたこともありました。
ここまでくると、旦那も気づいていないとは思っていないでしょう。
むしろ、あたしが離婚を言い出せないことを見越した確信犯のようでした。
もしそう旦那が思っていたなら、正解です。
実は一度、我慢できなくなって離婚を考えたこともあります。
旦那の外出のタイミングを狙えば、証拠写真は簡単に取れました。
何しろ、旦那はまるで警戒していませんでしたから。
まったくの素人であるあたしでさえ、ホテルに入る後ろ姿を撮れたくらいです。
ですが、あたしは結局、その写真を使うことはできませんでした。
気持ちが冷めてしまえばまだよかったんですが、あたしはそう簡単には割り切れなかったんです。
だから余計に、どうにもならないっていう閉塞感がすごかった。
やっぱりあたしはこうなっちゃうのか。
落ち込むような段階は既に通り越していました。
しばらく家で呆然としている日が続きました。
でも、そうしていたって何かが変わるわけでもありません。
精神状態がどんどん悪くなっていくのがはっきりと感じられました。
それでも何もできないままだったんですけど、ある日ふと、まずいと自分でも思ったんです。
半ば無理矢理でしたが、身づくろいをして外に出ました。
しばらくあまり外に出なかったせいか、日の光がまぶしく感じられました。
でも、本当にわずかでしたが、落ち着いた気がしました。
これからどうしよう。
当てはまったくありませんでした。
旦那以外にほとんど付き合いのないあたしですから、愚痴に付き合ってくれるような相手もいません。
それでも家に戻る気だけにはなれず、あたしは街の方に歩いて行ったんです。
駅前を通り過ぎ、どんどん歩いていくと繁華街に突き当たります。
あまり柄のいい地域ではなく、あまり足を踏み入れたことはありませんでした。
でも、その分にぎやかで、その時のあたしにとっては少し気が紛れたんです。
せっかくここまできたんだから、喫茶店にでも寄っていこうかな。
そう思ったときです。
「おねーさん、ボーっとしてるけど、大丈夫?」
振り返ると、一人の男性が立っていました。
いかにも遊び人風の、チャラチャラした格好。
この人が、あたしにとっての一人目の不倫相手だったんです。
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