デパートから少し離れたところに、数軒だけだけれどラブホテルが連なっている一角がある。
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恵理さんとはじめて入ったホテルは、そのうちの1軒だった。
不思議な気分だった。
今朝の時点では、まさか恵理さんとこんなことになるなんて思ってもみなかったのに。
社員食堂で誘われたとき、これまた最初の時と同じく、僕はむせそうになった。
今回は口に食べ物まではいっていたので、危うく噴出しそうになったくらいだ。
だが、必死に動揺を抑える僕をしり目に、当の恵理さんはいたって涼しい顔をしていた。
「ね、寝たいかって…どこからそういうことになるんですか」
「デパガの目を甘くみてもらっちゃ困るなあ?」
彼女はにんまりと笑った。
こうなるともう、ごまかすだけ無駄だ。
これまでの経緯で、彼女のカンのよさは十分にわかっている。
あっさりと、僕はごまかすのをあきらめた。
「…やっぱり、わかります?」
「うん、バッチリ」
「降参です。だけど、なんでわざわざそんなことを…?」
「ん?それなら一緒に行こうよっていうだけだけど?」
「んぐっ…!ごほっ、ごほっ…」
「ちょっと、大丈夫?」
今度こそ耐え切れず、僕は息を詰まらせた。
だってそうだろう。
社員食堂で、格安の定食を食べながらホテルに誘われるなんてシチュエーション、予想できるわけもない。
少なくとも僕は、こんな軽いお誘いを受けたのははじめてだ。
「ぜい…ぜい…」
「落ち着いた?」
恵理さんが持ってきてくれた水を飲んで、ようやく僕の咳込みは収まった。
午後の食堂にはやはり人はあまりいなかったけれど、それでも話題が話題だ。
まわりをいつも以上にきにしながら、小声で話を振る。
「あの、あんまりにも、ストレートすぎません?」
「そうかなあ。あなたとわたしの仲じゃない?」
「そこまでは行ってないでしょ、僕ら」
「寂しいこと言うなあ、そうでもないと思うんだけど」
恵理さんは少しだけむくれたような顔をした。
彼女にしては珍しい、というか、はじめてみた表情だ。
同年代とは思えないくらい艶っぽいイメージの彼女が、その時だけ歳相応に見えた。
「いや、そうは言いますけど…そう軽い話でもないでしょう、そういうの」
「別に、軽くはないつもりだけど」
「え?」
「いや、軽いのかなあ…真面目な話のつもりなんだけどな」
「はあ」
「最近、つまらなくてさ」
「まあ、そうですよね」
「それがね、最近前よりもちょっとひどくなってきてて」
「え?」
改めてみると、彼女はいつも以上に気だるい顔をしていた。
普段は色々言いながらも軽い雰囲気なのだけれど、今日は明らかにドンヨリしたムードが漂っている。
「最近、毎日味気ないのが我慢できなくなってきたの。これからもこんな感じでずうっと続くのかなって思うと」
「ああ…そう考えると怖いですね」
「でしょ?でもね、この間たまたまあなたに見られてるの気づいてさ」
「うわあ…気づいてたんですか?」
「雰囲気が変わってきたなとは薄々感じてたけどね。見てるところに直接気づいたのははじめて」
「面目ないです…」
「謝らなくていいよ。わたし、ちょっとそれにドキッとしちゃってさ」
「え?」
「あんなの、働き始めてからはじめてのことでね。その日はドキドキしたままだった」
話しているうちに、彼女の表情は何となく変わってきた。
こんな内容の話にはまったくそぐわないのだが…目がキラキラしている。
「それでね、思ったのよ。みられただけでこうなら、抱かれちゃったりしたら、もしかして毎日楽しくなるんじゃないかって」
「な、なんというか…」
「うん、単純だとは思うよ。でも、わたしにとっては結構真剣な問題なの」
「…」
「どうかな。嫌じゃなかったらつきあってくれない?あなたにとっても、退屈しのぎくらいにはなるかもよ?」
結局、僕はその話を受けた。
僕の側で自主的にブレーキをかけていただけだから、恵理さんの方が乗り気というのなら断る理由もない。
回りを警戒しながら、僕らはこそこそと、およそ社員食堂には似つかわしくない打ち合わせをした。
それで結局、その日のうちに僕と恵理さんはホテルにむかった。
うちのデパートは駅のそばにあるけれど、そこから逆方向に進む。
誰かに出くわしたりしないかヒヤヒヤしたが、幸い、誰にも出会うことはなかった。
冬に差し掛かった街を歩くのは楽じゃない。
自然に二人とも速足になっていた。
繁華街が途切れ、暗い道をしばらく歩いていくと、遠くに毒々しいネオンがみえてきた。
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「ずっと思ってたことだけどね。負け惜しみみたいだけど、仕事自体が目的って人なんてそんなにいないんじゃないかって」
彼女が遠くのネオンをまっすぐに見つめながら、ひとりごちるように言った。
僕は返事をしなかった。
どう返したらいいのかわからなかったのだ。
彼女も、返事がないことを気にしてはいないようだった。
「ほとんどの人は仕事でお金稼いで、それを使って何か別のもので楽しく暮らすために仕事してるんじゃないかなってさ」
「…」
「家庭とか趣味とか、目的は色々だと思うけど、仕事って結局はそのための資金稼ぎなんじゃないかなって」
「…」
「それで得られるものが仕事の苦労に見合ってるなら、帳尻合うんだろうなって思うの。でも、そう考えたら空しくなっちゃって」
「…」
「わたしには、その得られるものがないんじゃないかってね。…それが不安だったの」
「…その代用品が俺ですか?」
「うん…不満?」
「いえ、俺はまったく。…でも、ほんとにいいんですか?今のところ俺、恵理さんとやりたいっていうだけですよ?」
「大丈夫。わたしも…あなたのこと、色々言えるような立場じゃないからさ」
ホテルに入ってコートを脱ぐと、彼女はブランドの服のままだった。
「あれ、着替えてこなかったんですか?」
「うん。あなたもどうせならこの方がいいかと思って」
「よくわかってますね」
「言ったでしょ。デパガの目を甘くみないでって」
「かないませんよ、恵理さんには」
図星を突かれた以上、取り繕う必要はない。
どうせ、これから僕がしたいことも、彼女はお見通しだろう。
服も脱がずに彼女を抱き寄せ、軽く唇を吸った。
彼女の背に回した手で、服の上から彼女の身体をなぞる。
商品知識はいまだに少なかったけれど、さすがブランド服だ。
手触りが、いかにもやわらかい。
手を下に下におろしていき、スカート越しに彼女のお尻を鷲づかみにした。
店内で見惚れていた、彼女の姿。
その身体を僕は今から好きにできるのだ。
そう思うと、血がたぎった。
「んむっ…もう…皺になっちゃうじゃない」
「どうせ想定内でしょ?」
「そうだけどね。どうせ洗うし、破らなければいいよ」
「破ったら弁償ですかね」
「もちろん」
僕はそのまま、破れないようにだけは気を付けつつ、彼女を派手な色のベッドに押し倒した。
「…ちょっと、これは想定外かな」
「そうなんですか?」
「こんなに積極的とは思わないよ…」
「そうですかね…」
「…あ、あのね、誘っておいてこんなこと言うのも何なんだけど」
「はあ」
「わたし、Hはそんなに経験ないから…できればやさしくしてくれると…いいんだけどな?」
「…そうなんですか?」
「そう見えないかな?」
「見えないです」
「…それ、かなり失礼じゃない?」
つい素でこたえてしまったけれど、本気で気を悪くしたわけではなさそうだった。
不安そうな顔をしながらも、恵理さんは笑っていた。
もう、昼間みたいな重い雰囲気はなかった。
それで安心して、僕は彼女にのしかかった。
「ちょっと怖いけど…楽しみだよ」
恵理さんがささやくように言った。
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カテゴリ:デパガのエロ体験談(男性視点)