俺の故郷は海辺の寂れた寒村だ。
これでもかなり控えめな言い方で、将来は限界集落になること間違いなしの過疎地。
村全体がしーんとした感じで、道で見かけるのもほとんどは老人ばかりだった。
就職するまでずっと故郷で過ごしてきたが、今でも俺はいい印象を持っていない。
活気が皆無なのだ。
スポンサードリンク
そもそもうちの村だけでなく、あの辺り一帯は丸々過疎地域だった。
子供や若者が全然いない。
集落から相当離れたところに、周辺の町も含めたバカ広い学区を持つ学校が一つだけあったのだけれど、それも俺の世代を最後に閉校してしまったくらいだ。
それに加えてロクな産業がないから、生活が成り立たなくなって新天地に越していく家も多かった。
これで観光地だったならまだマシだったのだろうけれど、あの一帯にはそれさえなかった。
とことん、人を呼び寄せるには不向きな要素ばかりがそろっていたのだ。
そんな地域の中でも、俺の住んでいた集落の過疎っぷりは頭一つ抜けていた。
あの静けさは、今考えると少し不気味な感じさえする。
そんな村だけに、当時の俺の生活はお世辞にも楽しいとは言い難かった。
スーパーさえ経営が危ぶまれるような村だけに、本屋もゲーセンもない。
家で遊ぼうにも、当時の我が家はネットさえ引いていなかったし、そもそも親がダラダラさせてくれない。
さらに、外に行ったら行ったで、俺には友達がいなかった。
全体の頭数が少ない上に、俺は同級生たちといまいちソリが合わなかったのだ。
田舎で生活した経験がある人はわかると思うが、こういう環境で一旦人間関係から弾かれると、本当に村八分になってしまう。
かろうじて運がよかったのは、俺が典型的な体力バカで、喧嘩がだれよりも強かったことだ。
そんな俺にちょっかいを出してくるような奴はいなかった。それがせめてもの救いだったが、とはいえ退屈なことには変わりなかった。
だから俺の日課と言ったら学校をさぼって海辺をぶらぶらと散歩するくらいだった。
取り立てて散歩好きだったわけでもない。単に、他にすることがなかったのだ。
ただ、だからといって後悔はさほどない。
それに、やることはやっていた。たまたまだったが、それは散歩していたからこそ得られたセックスの機会だった。
もっとも、散歩とセックスという奇妙な取り合わせからもわかるように、それはなんともおかしな出会いではあったのだけれど。
+++++++++++++++++++++++++++++++++
その女に会ったのは、同級生たちが進路を気にし始めた、冬の日のことだった。
例によって学校での会話に入れないままだった俺は、その日昼休み前には学校をふらりと出た。
バスにのって集落の入口のバス停で降り、それから集落とは逆方向に向かう。行先はいつものとおり、海岸だった。
海岸に行ったところで、なにがあるわけでもない。
寂れた海水浴場が一つあるけれど、そこはゴツゴツした岩がそこらじゅうで顔を出しているようなところで、夏場でさえ閑散としている。
まして冬場となるとなおさらで、ひとっこ一人いない。ただ、荒涼とした防風林とわずかな砂浜が広がっているだけだ。
けれど、どのみち毎日に退屈しきっていた俺は、そんなことはどうでもよかった。
一人でいる時間が長かったせいか、むしろひとけがないならないで、心が落ち着くようにさえなっていた。
当然、その日も誰もいないだろうと思っていたから、海岸沿いの道をしばらく行ったところでその女の姿を見かけたときには驚いた。
あの季節に、あんなところで人を見たことは俺はない。
そこは、海水浴場からも少し離れた、海辺の小さな駐車場だった。
駐車場と言っても、今となってはただの空き地だ。
そばにある食堂はとうに閉店して廃虚になっており、窓はおろか入口まで叩き壊されて無残な姿をさらしている。
外に設置されたジュースの自販機も、もう動かなくなって久しい。
周辺にはそれこそ岩場しかないし、車がこの敷地にとまることは未来永劫ないだろう。
人けのない元駐車場には、北の海特有の冷たい風が吹き荒れている。その端っこの方で女はじっと立ち尽くしていた。
白衣を羽織ったその女は、真っ黒い雲が湧き出た灰色の空の下、眼下にひろがる荒海を眺めているようだった。
その姿はシュールではあったけれど、絵になる光景ではあった。
ただ、俺は正気かと思った。
あたりは住み慣れた俺でさえ耐え切れないほどの寒さだったのだ。
当然俺はかなり重装備だったのだけれど、その女はコートさえ着ていない。
白衣の下にも大して着こんでいないことは、背後からでもシルエットだけで見当がつく。寒くないのかこちらが心配になるほどだった。
スポンサードリンク
白衣や長い黒髪が、激しい風に吹かれて、宙に舞っている。
ロングスカート姿の彼女は露出自体は控えめだったけれど、この風のなかではあまり意味はなかった。
大した重さもないだろうロングスカートは、風にあおられてかなり派手に浮き上がってしまっている。
裾からは白いスリップのレースがひらひらとのぞいていた。
スリップは清楚な雰囲気だったけれど、黒いパンストの取り合わせがやたらに色っぽかった。
同級生ならキャーキャー恥ずかしがりそうなところだが、その女はそんなことには何の反応も示さなかった。
俺の視線に気づく様子もなく、ただ海の方を向いているばかりだ。
南国の穏やかな海とは違うから、見ていて楽しくなるような風景とはとても言えない。
いったい何がそんなに彼女の目を惹きつけているのか、不思議なくらいだった。
白衣を着ているということは、研究者か何かだろうか。こんなところに研究所があるなんて、聞いたこともないけれど。
このあたりではまず見かけたことがない風情の女の後姿を、俺は道路わきに立ち止まってしばらく見つめていた。
格好をつけても仕方がないので書いてしまうが、見とれた理由はほぼ完全に、スケベ心からだった。
人並みに性に興味のあった俺にとって、その女のスカートのめくれ具合はいかにも気になった。当時の俺の年頃で、パンチラに興味のない男なんていないだろう。いくら一人を気取っていたって、それは同じだ。
特に、俺は昔から、下着の中でもスリップに妙にそそるものを感じてしまう性癖だったから、万歳を叫びたいほどだった。
それに、スカートの中は別にしても、一見して大人びたその女はどこか都会的な雰囲気で、田舎者という自覚があった俺はよけいにそそられてしまったのだ。
もちろん、端から見たら不審者以外の何物でもない。
俺は見るからに学生といういで立ちだったからまだ少しはマシかもしれないが、それでも気づかれたら何を言われるか。
けれど、どうでもいいかと思った。そう思ってしまう程度には俺は退屈していて、だからその女の姿は、またとないくらいに刺激的だった。
何分ぐらいたっただろうか。急に、それまで以上に強い突風が吹き荒れた。
ロングスカート全体が風をはらんで膨れる。一瞬間を置いて、風圧に耐え切れなくなったかのように思い切りめくれ上がった。
数秒ないくらいだったが、見るからにつるつる、つやつやしてそうなスリップの生地と、黒いパンストに包まれた女の下着とがハッキリと目にとびこんできた。
パンスト越しで色はハッキリとはわからなかったけれど、多分白。
Tバックとまではいかないが、相当に布地の少ない、色っぽい下着が女の尻に食い入っていた。
「あーっ、もう、うっとおしい!」
白衣の女は、意外にかわいらしい声を上げた。
さすがにここまで派手にめくれてしまうと、いくら気にしない性格だとしても限度だったのだろう。
女は浮き上がったスカートをバサリと手で抑えながら、振り返った。
そして、俺と目があった。
正面から見ると、思った以上に綺麗な人だった。
クールそうな雰囲気で、モデル系とは少し系統が違うものの、十分すぎるほどの美女と言って差し支えない。
眼鏡をかけていたが、それで細い切れ長の目が余計に映えている。
肌は驚くほどに白い。
ほっそりした身体だったけれど、それでも服に浮き出た身体の線は、いかにも大人の女という感じだった。
「…」
「…」
ただ、いくら綺麗な相手でも、シチュエーションが気まずすぎる。
それ以前に、まったく面識のないこの状況ではどのみち声の掛けようがなかった。きっかけも発展性もなさすぎる。
俺も女も、しばらくお互い無言だった。
もし、女がからかい半分に声を掛けてこなければ、この出会いはそれだけで終わっていたはずだ。
風は相変わらず激しく吹き荒れていて、正面を向いた女のスカートを舞い上げていた。
片手で抑えてはいたけれど、それでもなおスカートの裾は浮き上がり、チラチラとスリップやパンストに包まれた脚が見えている。
そこからかろうじて目をそらすのが、俺の精一杯だった。
スポンサードリンク
カテゴリ:エロ体験談その他(男性視点)