「ふ、ふぐぅっ!?」
あまりに唐突過ぎて、意味が理解できなかった。もちろん、キスなんてはじめてだ。
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しかも、強烈なディープキスだ。
わけがわからず、彼女の舌に翻弄されるままになっていた。
彼女の身体の重みが、徐々に僕の身体にかかってくる。
酒が残っていた僕は、それに抵抗することができなかった。
上半身がベッドの上に倒れた。
僕はまるで後ずさるかのように、腕でベッドの表面をまさぐって体の位置をずらした。
明美の勢いが、なぜか怖くなったのだ。
腰の位置がずれたことで、ベッドの下に降ろしていた足がベッドの上になんとか持ち上がった。
その足も使って、さらに後ろにずり下がろうとする。
だが、むだだった。
彼女の身体も、その動きにあわせてついてくる。
動いたのはかえって逆効果だった。
完全にベッドの上に横たわる姿勢になってしまったのだ。
キスをしたまま、僕は明美に押し倒されていた。
服越しだったが、彼女の柔らかい身体の感触を感じるには十分だった。
胸も遠慮なく押し付けられて、それが彼女のわずかな動きに合わせて、僕の身体の上を這いまわる。
それに加えて香水だろうか、女性らしい香りが僕の鼻腔をまさぐる。
はじめて密着した、女性の身体。
股間の膨張は極限に達した。
もう痛いくらいだ。
彼女の唾液が、どんどん舌を伝って僕の口に流れ込んでくる。
口への中の刺激だけで、僕は頭が真っ白になっていた。
舌の動きに合わせて唾液が飛び散る、ぴちゃぴちゃという音。
かすかな音のはずなのに、それは異様に大きく、僕の鼓膜に響いた。
その音に異音が混ざる。
カチャカチャという金属がこすれる音。
僕のベルトが外される音だった。
明美は、僕にのしかかりながらも、身体のわずかな隙間に手を入れて僕のベルトを外したのだ。
そして、ズルズルとズボンとトランクスがまとめておろされていく。
股間への圧迫感が消えた。
遮るもののなくなった僕のペニスが、外界に向かって飛び出す。
飛び出した先端に、ふんわりとしたやわらかな感触。
明美のスカートの布地だった。
飛び出したペニスが明美のスカートの表面に触れたのだ。
やわらかそうな見た目とは違って、ザラリとした感触だった。
「ぷはっ…」
ようやく唇が解放される。
息を詰まらせかけていた僕の口に、新鮮な空気が流れ込んでくる。
口の中にたまった二人分の唾液を飲み込み、僕はなんどか荒い息をついた。
呼吸をすることに精一杯で、注意力が戻るまでに少し時間がかかった。
ようやく僕が我に返ったとき、明美は既に上体を起こしていた。
服は着たままだったが、手にはいつのまに脱いだのか、自分の下着があった。
それを彼女は、ぞんざいに床に放り投げた。
「ちょっとは落ち着いた?」
「あ、ああ…」
「あたしも夢中になっちゃって。スカートに汁、ついちゃった」
見れば、スカートの外布に、べっとりと透明な液体がこびりついて光っていた。
そこまで目立つわけではないが、どう考えても、僕のカウパーだ。
「わ、悪い…」
「いいよ、洗えばいいから…あたしこそ、ごめんなさい。こんなことになって」
「い、いや、っていうかさ…」
話しながらも、彼女は徐々に僕の身体の上で腰の位置を下げてきた。
もうすっかり普段の顔を脱ぎ捨てていた。
うつろな表情、それなのに生気に満ちた目。
矛盾だらけのその顔が、僕の目に焼き付いた。
まずいと思ったが、僕の身体は極度の緊張からか、まるでこわばったように自由がきかなかった。
「…お、おい…やめよう。別に僕だって、無理にしたいってほどじゃないし…」
別に嘘を言ったつもりはない。
性欲を満たせないことで不満が残るのは確かだけれど、それに流されて明美との関係が崩れてしまうのはそれ以上に嫌だ。
けれど、明美は顔を横に振った。
「本当に、ごめん」
「あ…」
「我慢できないのは、あたしの方なんだ。だから…せめて一度だけ、付き合って…」
彼女はそのまま腰を下ろした。
スカートが覆いかぶさってしまったので直接見たわけではないが、ペニスの先端が、彼女の陰毛に一瞬触れた後、柔らかい肉に接触する。
続けて、熱。
先端から徐々に、熱い粘膜に飲み込まれていく。
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本来なら興奮すべき状況なのに、僕は何か…絶対に守るべきだった何かが、壊れていくのを感じていた。
この期に及んでいきり立ったまま勢いを失わない自分のペニスが、ただ憎らしかった。
「お、おい!やめ」
「許して」
こちらを見下ろした彼女の目には、涙がたまっていた。
あれほど瞳には生気に満ちているにもかかわらず。
それが、僕の口も、抵抗も封じた。
彼女がさらに腰を下ろす。
あっという間に、ペニス全体が、彼女の中に飲み込まれてしまった。
「んっ…入ってるっ…」
「ううっ…」
僕は、唸り声しか上げることができなかった。
「…あたしが動くから…できれば引かないで…」
それだけ言って、彼女はいきなり腰を動かし始めた。
こすりつけるように。
ペニスを、味わいつくすように。
「おあああっ!?」
情けないが、僕は腰が抜けそうだった。
それほど、初めて味わう女性の膣は気持ちがよかったのだ。
「あんっ…か、硬いよおっ…」
「ううああっ…」
「硬いのが、当たってるうっ…いいっ…いいのおっ…!」
「おうっ…?!」
「あ、ああんっ…これ、これが好きなのおっ…!ちん●ん…好きっ…!」
「ちょっと…待って…」
恐ろしいくらいの快感。
だが、僕はどうしようもない気分だった。
彼女の目は、既に焦点が合っていなかった。
「ひんっ!あっ!ああっ…!あたしの中、ぐちょぐちょ言ってるうっ…」
「…!」
「おま●この中、いいいぃっ…!でちゃう、汁出ちゃうっ…!」
スカートで隠れされた結合部のあたりから、確かに水音がする。
それも、尋常な音じゃない。
ペニスの根元が、水浸しになったように濡れているのがわかる。
「ほ、ほらあっ…みてえ、すごいでしょっ…」
彼女は腰を止めないまま、唐突に自分でひらりとスカートをめくりあげた。
目前にあらわれた光景は、凄惨といっても言い過ぎではなかった。
彼女の身体の揺れに合わせて、スカートの中で、さっき目にしたレースの薄布がひらひら揺れていた。
至近距離で見るとかなり丈が長い上につくりもかなり派手だ。
キャミソールかと思ったが、スリップだろう。
そして、その薄布のさらに向こうに、文字通りぐちゃぐちゃになったお互いの股間があった。
すっかり充血したうえに彼女の汁にまみれた僕の肉棒が、血管を表面に浮き立たせて、彼女の膣に突き立っている。
一回一回、僕の肉棒が出たりはいったりするたびに相当の量の汁が跳ね、スリップにも飛び散って染みを増やしていく。
白いスリップはそれだけなら清楚な印象だったが、来ている本人の淫らな体液をそこかしこに浴びて光る薄布には、清らかさなどみじんもなかった。
ピンク色の粘膜はえげつないほどにばっくりと割り開かれ、彼女が腰を動かすたびに、膣口が今にも裏返らんばかりにヌメヌメと蠢いた。
接合部には、すっかり泡立った、半透明の濁った液体がべったりこびりついている。
仮にだが、万が一子供が目にしてしまったら、多分一生もののトラウマになるだろう。
「ちん●んが、あなたのちん●んがっ…暴れてるっ…!」
「…」
「奥、ゴリゴリ来る…っ!あ、ああああんっ…!」
さすがに何か言おうと思ったが、彼女の顔を見返して、僕はやはり何も言えなかった。
陶酔し切った顔。その、焦点の合わないままの目からは、おどろくほど大量の涙があふれ出ていた。
「あ、ああんんんんっ…や、やっぱり、あたし…最悪だよねっ…」
「えっ…」
「こんな女なんだよ…ただちん●んが欲しいだけなのおっ…!」
「…」
そうだ。彼女も自覚はあるのだ。
ただ、自分でもどうしようもないというだけで。
彼女は、半ば白目をむきながら高まっていった。
「あっ…ちん●んヒクヒクしてるっ…も、もう出そうっ?」
「あ、ああ…だから、せめて抜いてくれっ…外で…」
「だ、だめだよっ…あなたの精子、いっぱいもらっちゃうんだからっ…」
「お、おい!さすがに」
「いいの…あっ…いくっ、…もういく、いっちゃううっ…!」
「よ、よせっ…!」
言葉もむなしく、僕の身体は持ち主の意思に反して限界を迎えた。
彼女のこすりつけるような動きに耐えられず、下腹部で爆発するような感覚。
そして、僕の白い液体が彼女の膣内に殺到した。
「あ、精子きたっ…あ、ああああああっ…………イクうううっ……!」
僕の上で痙攣する彼女。
その間にも、びくりびくりと、僕のペニスは彼女の中で精を吐き出し続けていた。
そのたびごとに、彼女の身体が揺れた。
やがて、その動きが止まり、しばらく無言の間があった。
「ごめんなさい…」
絶頂を迎えて冷静に戻ったのだろう。
しぼんでいく僕のペニスを胎内に収めたまま、彼女は僕を見下ろしながら、落ち着いた声で言った。
「あたし、こんな女なの。…軽蔑、していいよ…」
「…いや」
「え…?」
「僕は、軽蔑しない」
本当は、もっと気の利いたことを言うべきだったんだろう。
けれど、その時僕には、いい言葉が浮かばなかったのだ。
だから、その代わりに精一杯の愛着をこめて声をかけたつもりだった。
時々ハメを外す悪癖はあるけれど、この上なく気のおけない友人に。
「…そう言ってくれると…救われるよ」
彼女の表情が、わずかにではあったけれど、柔らかくなった気がした。
「でも、…やっぱりあたしはこんなだから」
それだけ言って、彼女は上体を折り曲げ、僕に向かって倒れ込んできた。
慌てて抱き留める。
彼女の顔を見る。
ほおに涙の後がはっきり残っていた。
彼女とは、その1回限りだった。
その後まもなく、明美は病院を去ってしまったのだ。
僕がその一因を担っているのは間違いない。
あの日、事が終わった後、僕は付き合わないかと彼女に言った。
こうなった以上、ただの友人でいるのは無理だろう。
でもそれなら、正式に恋人になればいいじゃないか、と思ったのだ。
僕は既に情が湧いていたし、彼女のことを放っておけなかった。
だから、彼女とはこれまでとは違う形になっても、付き合い続けたかったのだ。
だが、彼女はそれをきっぱりと拒絶した。
「すごく嬉しいよ。だけど…あたしはきっと、他の男とするのを止められない。それであなたを傷つけるのだけは嫌」
彼女は、半笑い、半泣きの顔でそういった。
涙で化粧も剥げてしまって、瞼も真っ赤になったその顔はボロボロだったけれど、その割り切った姿はただただ綺麗だった。
彼女が辞表を出したのは、その数日後だった。
彼女の最終出勤日、僕らは短い挨拶を交わした。
「お疲れさま」
「うん、ありがとう」
「僕が原因なんだろうな…ごめん」
「気にしないで。どうせ、この病院にもいい加減愛想つきてたから」
「ああ、そっちの理由もか…」
「少しは気が楽になった?」
「ああ、ありがとう。…最後まで気を使わせちゃったな」
「いいって…あのさ」
「ん?」
「もう会うことはないだろうけど、手紙くらいは送ってもいいかな」
「ああ…」
こうして、僕は院内での唯一と言っていい友人を失ってしまった。
いざ一人になると、この病院のとげとげしい雰囲気は、以前以上につらくなった。
けれど、明美から時々届く手紙が、心の支えになっている。
ペンフレンドという関係ははじめてだったけれど、思った以上に悪くない。
彼女は東京に引っ越して、どういう流れか、今度は一般企業に就職したらしい。
文面を見る限り、うまくやれているようだ。
手紙にはもちろん、人に見られても差しさわりのない範囲のことしか書かれていない。
けれど、僕はかかれていないことにまで想像をめぐらす。
おそらくだが、都会というのも彼女にはよかったんだろう。
東京くらい人が多い街なら、彼女の性癖がバレることもそうそうないだろうし。
彼女からの手紙は、月1回くらい、割と頻繁に届く。
それを見るたびに、僕は彼女の、あの日の泣き顔を思い出す。
そして、あらためてこれでよかったんだと思うのだ。
僕が手紙をみながら、いまだについ苦笑いしてしまうのはともかくとして。
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