自分でいうのもなんだけれど、わたしは地味な女だと思う。
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昔からわたしはこうだった。
試しにおしゃれしてみようとしても、マニュアルどおりにやったつもりでもなぜかあか抜けない。
性格的にも同様だ。
とりたててまじめだったとは思わない。
ただ、昔からこの性格でいることが当たり前だったし、派手になることにさほど意味を見いだせなかった。
ましてや、道を踏み外すようなことには縁がなかった。
グレることはもちろん、普通の人にとってのちょっとした冒険さえ、わたしは体験したことがなかった。
ただ、いくらそんなわたしでも、何も感じなかったかというと嘘になる。
まわりには派手な子も、個性的な子も、遊んでいる子もたくさんいて、彼女たちは総じて楽しそうに見えた。
そして、当然だけれど、大人になるにつれそうした女の子の割合は増えていく。
華やかな彼女たちと比べると、わたしの生活はあらゆる意味で地味くさく思えた。
それがただの感覚的なものならまだよかったのだけれど、実際にわたしの生活は変化に乏しく、無味乾燥としていた。
別に、地味だからといってみんながみんなこうなるとは思わない。
わたしがこんな生活になったのも、多分たまたまだろう。
けれど、理由がどうであれつまらないことには変わりなかった。
男性経験が少なかったことも、それに拍車をかけた。
年齢を重ねるごとに、わたしは自分の地味さを疎ましく思うことが増えていった。
でも、かといってどうすればいいのかはわからなかった。
既にわたしの中には、地味な自分というのがスタイルとして出来上がってしまっていた。
今さらどう変えていいのかもわからない。
そうやって思い悩んだのは、かえって逆効果だったかもしれない。
いつの間にかわたしは、自分が地味ということが明確なコンプレックスになってしまった。
それも、ただのコンプレックスでは終わらなかった。
最初はただ派手になれたらなあというくらいだったのが、考えていくうちにどんどん方向性がねじれていった。
いつの間にかわたしは、かつては全く縁のなかった、不良やアンダーグラウンドの世界に憧れるようになっていたのだ。
わたしは事あるごとに、自分がそうした世界に身をやつしている様子を想像しては、歪んだ変身願望を募らせていった。
荒っぽい、怪しげな人々に囲まれて世間に顔向けできないような行為に興ずる自分を想像すると身体が震えた。
性的なことに思いが至って、殺風景な自室で自慰に没頭することもたびたびだった。
もっとも、いくら変身願望が募ったところで、そのやり方がわからないのは変わらない。
悶々としたまま、わたしは学校を卒業し、職を得た。
それが現在の教師という職業だ。
別に大志があったわけではない。
地味な人たちが多そうな世界だと思ったからだ。
地味なわたしがあまりコンプレックスを感じずに済みそうという、なかばやけくその、ネガティブな志望理由だった。
もちろん、面接などではおくびにも出さなかったけれど。
ただ、そうして選んだはずのこの職場で、わたしは意外にも、かねてからの変身願望を満たすことに成功した。
同僚にも家族に言えないのはもちろん、社会的にも許されない形ではあったけれど。
わたしが勤めることになった学校は、富裕層をターゲットにした、いわゆるお坊ちゃんやお嬢様向けの学校だった。
あからさまにそう謳っているわけではない。
ただ、学費の高額さからして、富裕層以外の入学は事実上不可能だった。
そんな学校だったから、どうせおとなしい子ばかりだろう、とわたしは勝手に考えていた。
だが、その当ては外れた。
確かに富裕層ではあったが、思った以上に派手な、素行の乱れた子が多かったのだ。
どの子もお金にだけは不自由していないようだったが、まさに悪い意味でのボンボンの集まりだった。
もちろん、全員が全員そうだったわけではない。
けれど、かなりの割合を占める素行不良のボンボンたちは、授業中も口にこそ出さないものの、あきらかに見下した目でわたしを見つめた。
彼らにとっては、わたしはただのあか抜けない、それこそ地味一色の新人に過ぎなかったのだろう。
さすがに同僚の先生たちは地味な人たちが多く、職員室に帰れば気楽だったが、総じてわたしにとってあまり居心地のいい環境ではなかったといえる。
そんなある日、わたしは学校にほど近い繁華街に駆り出されていた。
そこで、生徒の非行や街中での校則違反がないかを見回る。
数ある教師の仕事の中でも、生徒からすれば一番うざったく感じるであろう業務だ。
わたしは不安だった。
普段ですら、あの扱いだ。
もし素行の悪い生徒を見つけたとして、どう声をかければいいのだろうか。
第一、どんな声かけをしたところで、彼らがわたしのいう事を聞いてくれるとはとても思えなかった。
けれど、仕事である以上、断ることはできなかった。
街中に放り出されたわたしは、途方に暮れながら、めぼしいところを見回っていった。
最初のうちは問題はなかった。
問題のある生徒など見当たらず、わたしはこれなら無事、何もなく終われるのではないかと期待し始めていた。
だが、30分ほどたった頃、その期待は見事に裏切られた。
指示された巡回地域のほぼ端っこまで来た時のことだ。
この辺まで来るともう繁華街とはとても言えない街並みで、遊ぶ場所などひとつもない。
ここまで来て誰もいなかったんだから、もう大丈夫。
そう思って踵を返そうとしたとき、わたしの目は見覚えのある生徒をとらえていた。
学年の中でも、かなり悪い噂のある男子生徒。
授業中にはあからさまにバカにした目でこちらを見ている生徒だ。
もちろん、ボンボンの一人だからお金には不自由なさそうだったけれど、それを使ってどこか怪しげな店に出入りしているとか、そういう噂が絶えなかった。
その彼が、女の子と一緒に歩いている。
こちらの子はまだうっすらとしか記憶がないが、確かこの子も素行不良組だ。
二人は大胆にも制服のまま、こちらに背を向けて歩いていた。
距離的には少し先で、声を掛けるには遠すぎる。
どうしようかと逡巡したとき、彼らの姿が先の方でいきなり消えた。
どうやら、角を曲がったようだ。
歩いているだけならなんとも言いようがないが、不純異性交遊の可能性もあり得るといえばあり得る。
見つけてしまった以上、最低限だけでも確認するしかない。
わたしは内心、ため息をつきたい気分で、彼らの後を追った。
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現場を抑える前に鉢合わせしないように、さりげなく、でも注意深くわたしは近づいていった。
近づくにつれ、彼らが曲がったのはどうも道路ではなさそうだとわかってきた。
道路の先にチラチラと、空き地のような空間が見えている。
正確ではないけれど、かれらの姿が消えたのは多分あのあたりだろう。
ちょっとしたデートでもしているのだろうか。
幸いなことに、その空き地の入り口に汚れたバンが一台止めてあるのが見えた。
運転席には、見たところ誰もいないようだ。
あそこの影で一旦様子を伺おうかと思い、とりあえず車のそばまでこそこそと歩を進めた。
が、そこでわたしの目は点になった。
バンの汚れたガラス窓、その向こうに、多少距離はあったが、空き地の奥で抱き合っている彼らが映っていた。
抱き合っているといっても、かなり控えめに言えばの話だ。
男子生徒の方は、今にも首筋に舌を這わせようとしているし、背中にまわした手は、既に女子生徒のスカートを半分くらいまでめくりあげている。
女子生徒は女子生徒で、男子生徒の腰のあたりをしきりにさすっている。
それこそ、今にも股間に手を伸ばしそうな勢いだ。
まさか、ただの空き地でここまでするとはわたしには想像もつかなかった。
バンのあるこの位置ならまだしも、それ以外は道路から遮るものは何もない。
通行人からも丸見えなのだ。
一瞬躊躇したが、わたしは思い切って飛び出していた。
さすがに、これを見逃したらまずいと思ったのだ。
ただ、飛び出したはいいものの、何を言っていいかわからない。
空き地の入口で立ち尽くすわたしは、さすがに不自然だっただろう。
声をかける前に、彼らの方が気が付いた。
「あれぇ?地味子がみてるよぉ?」
女子生徒のバカにしたような第一声。
それが、わたしの胸に突き刺さった。
直接言われたのがはじめてだったこともあるが、その言い方はわたしにとってはあまりにもきつかった。
出そうとしていた声が出なくなった。
「なにやってんだあの地味子。のぞき?」
「あれじゃない、校則違反とかの調査」
「うわ、だっせー。今時…」
「まあ、地味子にはお似合いっちゃお似合いの仕事よね」
「あーそれ受けるわー」
連続して、ザクリザクリと彼らの言葉はわたしの急所をえぐった。
眉間がヒクヒクと痙攣し始めるのを感じた。
それでも、なんとか気を取り直して、わたしはなんとか一言だけ、口にした。
「あ、あなたたち、こんなところでなにしてるの」
けれど、力の入っていないそのセリフには何の威圧感もなかった。
彼らはお互いの身体を離すと、へらへらしながら近寄ってきた。
「いやー、健全な待ち合わせですよぉ。せんせーもお仕事ご苦労さまっす」
「け、健全って、抱きあ…」
「あれ?そんなことしてたっけなぁ?記憶にないなぁ」
「記憶にないって…」
「地味ちゃーん、夢でもみたんじゃないのぉ?きゃはは…」
「じ、地味ちゃん、って…」
「そのとおりじゃん、白けたわぁ」
わたしをまったく意に介していないことは明白だった。
そして、実際にわたしはなにもできなかった。
ただ、呆然と凍り付いていた。
彼らがそばを、嘲笑しながら通り過ぎていったが、わたしは止めることもできなかった。
少し離れたところで、男子生徒が女子生徒に声をかけるのが聞こえる。
「悪ぃ、ちょっと先行ってて」
「えーなに?あの地味子にちょっかい出そうっての?趣味悪ー」
「いいじゃんか、ちょっとしたお誘いをしてあげようってのよ」
「ふうーん、ホント物好き…」
ぼんやりと聞いていると、近寄ってくる足音がして、肩を叩かれた。
振り返ると、あの男子生徒が立っていた。
「近くで見ると、ますます地味だなぁ、せんせー」
「…なっ…!」
彼は、顔全体にニヤニヤ笑いを浮かべていた。
いかにも軽薄な顔。
そして、悪意に満ち溢れた顔だった。
「地味子っつったとき、せんせー顔変わってたからさあ。あーこれ、気にしてんだなーって。一発だったわー」
「そ、そんなことっ…」
「バレバレだって。いやね、そんでせんせー固まっちゃってたからさあ、悪いこと言っちゃったかなーって思ってさぁ、ごめんねー」
申し訳ないという空気はまったくなかった。
「それでさあ、お詫びっちゃなんだけど、俺がせんせーに地味じゃなくなるやり方、教えてあげよっかなあって思ってさあ」
「なっ…何のつもりよ…それっ…!」
歯を食いしばりながらわたしは言い返した。
自分でも、怒りが声にこもっているのがわかる。
けれど、彼にはまったく堪えなかったようだ。
「ひゃははっ…せんせ、そう意地を張ることもないでしょー?」
「ふ、ふざけるのもっ…!」
「あー怖い怖い。ま、気が向いたら声かけてよ。めくるめく世界にご招待しますよー。ぎゃははは…!」
そこまで言うと、彼はあっさりとわたしに背を向けて立ち去って行った。
わたしは拳を握りしめて、彼の後姿を呆然と見送るしかなかった。
なんとか平静を保つのが精いっぱいだったのだ。
その日、わたしは全く眠ることができなかった。
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