真澄の恋愛は、当初はうまくいっているようでした。
以前とは違って赤裸々な話はしなくなったものの、彼女の表情を見ていれば順調なのは聞くまでもなかったからです。それほど、彼女は充実した顔をしていました。
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ですが、1年くらいたった頃から、真澄と連絡が取りづらくなったんです。
取れても、「ごめんなさい。ちょっと取り込んでて…」の繰り返し。何かあったな、とは思いました。
電話の向こうの声は、この前までと打って変わってドンヨリしていて、彼女の性格を考えたらあり得ないくらい暗かったからです。
おそらく、彼女なりに何らかの手を尽くそうとはしていたんだと思います。
ですがお分かりのように、恋愛って努力すればどうにかなるってものでもないんですよね。
真澄から久しぶりに携帯に電話が入ったのは、そのさらに半年後くらいでした。
こんなに間が空いたのは、彼女と知り合ってから初めてだったかもしれません。
「別れちゃった」
不自然に明るい声でした。どう聞いても、無理しているのは見え見えです。
「そう…」
「あはは、うまくいかないもんだなあ。難しいよね、恋って」
「そうだな」
「ほんとねえ、わかんないよ、もう。学校の試験とかみたいに答えがあるといいんだけどねえ。ああ、これじゃなんか歌の歌詞みたい。我ながらくっさいなあ」
「…」
「…なんか言ってよ」
電話の向こうの、真澄の声が震え始めました。限界が来たんでしょう。
「なんか…言って………なんでも…いい………から…」
「………………残念…だったな」
「…う…う…うぁ……………………わああああああああんんんんっ…!」
受話器が壊れんばかりの大音量で、彼女の泣き声が響き渡りました。
1時間くらい、俺はただ、それを無言で聴き続けていました。
それからさらに数週間の間、俺は真澄とはすっかりご無沙汰でした。
一度飲みに誘ってはみたんですが、真澄の方から落ち着いたら連絡するの一点張りだったので、どうしようもなかったんです。
ですが相当落ち込んでいるのは確かで、俺は彼女のことを思い出すたび気をもんでいました。
強引にでも誘うべきだったかと思い始めた頃、ようやく彼女から連絡がありました。
「この間はほんとにごめん。迷惑だったでしょ?」
「いいよ。むしろあんなもんだろ、別れた後なんて」
「あはは、そう言ってくれると助かる」
「吹っ切れたのか?」
「まだ、ちょっとね。でも、だいぶマシにはなったから」
元気があるとは言い難かったですが、それでもこの間に比べればはるかに落ち着いた声です。
俺はホッとしました。
「それで、今日は何?愚痴なら聞くぞ?」
「うん。愚痴…ってわけじゃないんだけど、飲みにいかない?久しぶりに」
「ああ、いいな」
とんとん拍子に話は決まり、数日後の金曜日、俺は真澄と駅前の居酒屋で酒を飲んでいました。
「もうちょっと落ち込んでるかと思ったよ」
「化粧でごまかしてるんだよ。取ったらまだ結構ひどいよ?」
「そう…でもだいぶ落ち着いたみたいじゃないか?」
「うん。最初はひどかったけどね。もう泣いて泣いて」
「そうだろな」
「なんかね…今回、新記録なの」
「新記録?」
「付き合った期間。1年以上続いたことって、あたしはじめてで」
「ああ、たしかに今までハイペースだったもんな」
「そうなの。だから余計にね…」
「…」
「あ、ごめん。久しぶりなんだから、パーッと飲もうよ。パーッと」
とはいえ、どうやったって意識しないわけにはいきませんでした。
俺は敢えて恋愛話に繋がりそうな話題は避けました。
真澄の愚痴にはいくらでも付き合うつもりでしたが、本人が言わない以上、こちらからも下手に切り出せません。
結局、他愛もない世間話をしているうちに、俺たちはかなりの量の酒を飲んでいました。
「あははははは、なーんかぁ、気分よすぎー♪」
「…飲みすぎだろ」
真澄はすっかり弾けてしまっていました。
彼女には珍しいことです。特に酒に強いというほどではないですが、性格が変わるようなことはこれまでなかったですから。
ただ、それは別に構わないんです。
問題は、あからさまに身体全体がフラフラしていることでした。特に脚のフラフラっぷりはひどいものです。
気分は悪くないようでしたが、夜道を一人で帰らすにはきわどすぎました。
「ほら、肩貸してやっから」
「ふぃー?なーんだ、やっさしいじゃない、今日ー」
「別にそういうわけでもないけど。ほら、家帰るぞ」
「送ってくれるのー?」
「…送らないわけにいかないだろ、これじゃ」
「やっさしいー!」
無理にカラ元気を出した部分はあったと思いますが、ある程度は彼女の素でしょう。
…こんなふうになるんだな、と俺はつきあい数年目にして、彼女のあらたな一面を見た気がしました。
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真澄の今の部屋に来るのははじめてでした。
学生時代に住んでいた部屋には友人数人と押し掛けたりもしたんですが、その頃とは違ってかなり堅牢なつくりのマンションです。
なんとか部屋の前まで肩を貸して連れてくると、真澄が言いました。
「せっかくだからさぁー、上がっていきなよー」
「いや、いいよ…」
「遠慮しなくていいってー」
酔っ払いに背中を押され、俺は半ば強引に部屋に連れ込まれました。
「もうお酒はいいよねー。なんか飲み物、飲む―?」
かなり呂律はあやしいとはいえ、気遣いができるということは正気は保っているようでした。
「あー…ウーロン茶とかある?」
「あるよー。持ってくねぇー」
ウーロン茶と言ったのはわざとでした。酔い覚ましにはいいかと思ったんです。
ただ、これは、ある意味では逆効果でした。
「…」
「…」
無言。
連れ込んだはいいものの、彼女はその後のことは一切考えていなかったみたいでした。
ウーロン茶を二人で座って飲んでいるうちに、彼女の酔いはだんだん冷めてきて、それに従って口数も減ってきて、とうとう会話が途切れてしまったんです。
しばらく無言の時間が続いたあと、真澄がぽつりと言いました。
「…この間までさ。あんたの座ってるあたりに彼氏がいて…あはは…なんかね…」
「…」
やはり、家ではまだ、どうしても別れた彼氏のことを思い出してしまうようでした。
けれど、それにしても重い。
外だったらまだ気も紛れたんでしょうが、彼女の自室で、二人だけでこんなことを言われたら、俺も何も言えません。うなづくくらいしかできませんでした。
もっとも、気まずかったのは俺だけじゃなく、彼女だって同じだったようです。
「…ごめん。ちょっとお風呂入ってきていいかな」
「いいけど…大丈夫か?かなり酒、残ってるだろ?」
確かに彼女の顔はだいぶ普段のそれに近くなっていました。
とはいえ、身体の動きはまだかなりフラフラしていて、かなり不安をあおるものでした。
「大丈夫だって。もう、だいぶ抜けてるから…」
ですが、真澄はそういってお風呂に向かってしまったんです。
一人リビングに取り残された俺は、黙って部屋を見回していました。
見れば、部屋の隅っこには、まだ彼氏らしき人物と二人で映った写真が飾られたままです。
…これは確かに、吹っ切れてないな…
そう思っていると、風呂場の方からいきなりガタン!という音がしました。
続いて、げぇーっ、げぇーっという声。
…これ、まずいんじゃないか!?
慌てて俺は、風呂場の脱衣所に飛び込みました。鍵はかかっていませんでした。
浴室の中の様子はもちろんうかがえませんが、サッシのドアに嵌った擦りガラスの向こうに、床に蹲る人影がうっすらと写っています。
「おい!大丈夫か!?」
「う、うげぇ…」
少し躊躇しましたが、俺は踏ん切りをつけました。万が一のことを考えると、どう思われるかとかは大した問題じゃない。
「悪い!開けるぞ!」
「げぇ…へぇ…っ!?」
ドアはあっけなく開きました。
全裸の真澄が、こちらに背を向けて床に這いつくばっています。
「どうした!?気分悪いのか!?」
「げえぇ…ち、ちょっとぉ…みないでよ…エッチ…うげ」
「んなこと言ってる場合か!」
「うぷっ…ごめん…。…急になんか、吐き気来ちゃって…」
真澄の身体の陰になってよく見えませんでしたが、床には彼女の吐しゃ物がまき散らされていました。
かなり油ものも食べましたから、今になって一気に来たのかもしれません。
「頭とか打ってないよな?」
「それは大丈夫…。脚ががくんってなっちゃって、でもそれだけ…」
「救急車呼ぶか?」
「いらない…こうなるの、はじめてじゃないから、自分でもわかるよ…」
確かに、それ以上の問題はなさそうでした。
ですが、そう言われても、心配なものは心配です。
俺は、蹲ったままの真澄に手を差し出しました。
「ほら、ベッドいくぞ」
「…?」
「今日はもう、早く横になれって。後始末はしといてやるから」
「うん…わかった…」
意外に、真澄は素直に俺の手を取り、フラフラしながらも立ち上がりました。
脱衣所でタオルで身体を拭くのを待ちます。
着替えに彼女は手を伸ばしましたが、まだ動きがおぼつかないようで、なかなかうまく着れません。
ようやく上半身だけ来たところで、俺は言いました。
「…あとは部屋で着るか?」
「…その方が、いいかもね…」
一応肩を貸してベッドに連れていきました。
空調が効いていたこともあって、寒いといったことはありません。
彼女がベッドに座ると、トスン、と軽い音がしました。
疲れていたんでしょう、彼女はそのまま、ごろんと横になりました。
「おい、まだ下」
「…いい…なんかもう…面倒くさいし…」
「そうか…」
「…見られちゃった」
「ん?」
「もう長い付き合いだけど…裸、見られたことはなかったね」
「悪かったよ…」
「いいよ…。あれだけ慌ててくれたのがね…今ちょっと嬉しい」
コロンと、彼女の身体がベッドの上で回転してこちらに背を向けました。
まるで、俺に顔を見せないようにするかのようでした。
その拍子に、ふと、何も着ていない下半身が目に入ったんです。
尻好きの男なら、間違いなく興奮してしまうだろう、真澄の尻。
さっきは慌てていましたからそれどころではありませんでしたが、ひとまず落ち着いた今はまったく別でした。
服を着ていても目を惹いてしまうものが、眼前にむき出しなんです。
想像以上に白い、ほどよくやわらかそうな二つの丘がふっくらと並び、そして、その丘の谷間には…
思わず、完全に目を奪われました。真澄の生の尻は、それだけでえげつないほど引き付ける力を持っていました。
そして、見れば見るほど、二つの肉の塊の奥にあるであろうアヌスのことまでが、克明に頭の中で描きだされていきます。
そのままかなりの時間、俺はそれを見つめていたように思います。
「お尻…やっぱり…気になる…?」
後ろを向いたままでしたが、途切れ途切れに彼女の声がしました。
それでようやく我に返った俺は、愕然としました。
股間が膨らんでいる。それは、俺が初めて長年の女友達に対して欲情した瞬間だったんです。
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